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【百年シリーズ】森博嗣『女王の百年密室』の感想と考察【ネタバレあり】

 

あらすじ

旅の途中で道に迷ったサエバ・ミチルとウォーカロンのロイディは、高い城壁に囲まれた街に辿りつく。高貴な美しさを持つ女王、デボウ・スホの統治の下、百年の間、完全に閉ざされていたその街で殺人が起きる。時は2113年、謎と秘密に満ちた壮大な密室を舞台に生と死の本質に迫る、伝説の百年シリーズ第一作。

出典元:https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000212554

 

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感想と考察(ネタバレあり)

他のシリーズとは全く毛色の違う本作。他のシリーズとの共通点といえば、コーヒーが出てくることくらい。結論から先に書くとそこまで好みではなかった。近未来ならではのワクワク感は他のシリーズでは味わうことのできない魅力だな、と感じたけれど、今のところは早く読了してしまいたいという気持ちが強い。ミステリというよりはファンタジーに近いような感じがする。

登場する人物の名前が全て横文字なのが非常に覚えにくかった。漢字を覚える必要がないのだから横文字である方が覚えやすそうな気がすのだけれど、何故だろう。聞き慣れない名前だからだろうか。

主人公の名前はサエバ・ミチル。四季の娘と同じなのには何か意味はあるのだろうか。あるに違いないけれど。主要な登場人物が少ない上、相方が旧式のウォーカロンなので、森先生の醍醐味である天才キャラ同士の会話シーンを堪能することができなかったのが本作で一番残念な点だった。ロイディに話しかけるように推理をするシーンはなんだかよかったけれど。女王デボウ・スホとの生と死に関するディスカッションは面白かった。

近未来SFというだけでも珍しいのだけれど、探偵役の主人公が人を殺す、というの点でも珍しい本作。他の作者の小説を含めても探偵役が人を殺す作品は珍しいのではないだろうか。人を罰する仕組みのない「ルナティック・シティ」という密室を有効活用したストーリー。

トリックについてはミステリとしてはズルいような感じがしたけれど、密室ならではのトリックといえなくもない。このシリーズのトリックはこの類が多いのではないかと予想。犯人には驚かされたし、登場シーンは目に浮かぶようでとてもよかった。

殺された恋人のクジ・アキラの身体をロイディに移植?されたサエバ・ミチルの脳みそが動かしている、という認識で良いのだろうか。イマイチよくわからない。この2人は名前だけ聞くと性別が逆であるように感じるのでややこしい。シャワーから上がった姿を見たナナヤクが驚いていたような描写があったような気がするのだけれど、それは身体が女性だったからだろうか。もう一度読み返して確認したい。

マノ・キョーヤが自分の名前は漢字でどう書くのかを説明した後もカタカナ表記のままだったのが気になったけれど、これにはおそらく意味はないのだろう。ちなみに漢字は真野強矢。

サエバ・ミチルが占師や医師、友人に「ゴーストにとり憑かれている」と言われていることや、ロイディに「記憶がないのは日常的なことだ」と言われていることから、なんだかまだ秘密がありそうな気がする。

この街を造ったのは、当時世界一の資産家だった女王の父ビー・ジーとその友人のミュージシャンのマイカ・ジュクらしいのだけれど、この百年シリーズも他のシリーズと同じ世界線であると考えるのであれば、この2人は他のシリーズの登場人物と関係のある人物である可能性は高いだろうから、覚えておいて損はないだろう。どのようにして他のシリーズと関わってくるのか全く想像がつかないので楽しみ。

本編とは関係ないけれど、百年シリーズは装丁が美しいので文庫ではなく、単行本で集めることにした。