あらすじ
森ミステリィのこれまでとこれから
S&Mシリーズに続くVシリーズ主要人物も登場する傑作短編集!「黒窓の会」。西之園萌絵を囲んで開かれるその秘密の勉強会にゲストとして招かれた犀川創平は、古い写真にまつわるミステリィを披露した。屋根飾りと本体が別々になった奇妙な石塔は、何のために作られたのだろうか。S&Mシリーズ2編を含む、趣向を凝らした10作を収録。『まどろみ消去』に続く第2短篇集。
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目次
小鳥の恩返し The Girl Who was Little Bird
片方のピアス A Pair of Hearts
素敵な日記 Our Lovely Diary
僕に似た人 Someone Like Me
石塔の屋根飾り Roof-top Ornament of Stone Ratha
マン島の蒸気鉄道 Isle of Man Classic Steam
有限要素魔法 Finite Element Magic
河童 Kappa
気さくなお人形、19歳 Friendly Doll,19
僕は秋子に借りがある I'm in Debt to Akiko
感想
短編集2作目。全10編の中に目当てのS&Mシリーズ作品は2編(正確にいうと3編になるのかな?)収録されていたのだけれど、どちらもとても面白かった。殺人や密室が関わってこない点や、どちらの話も諏訪野がキーになっているのと点などは短編ならではだなと思った。この2編だけで「この短編集は面白かった」という感想にしてしまうだけの満足度があった。
Vシリーズの短編『気さくなお人形、19歳』も収録されていたのだけれど、これは僕の好みではない小鳥遊練撫が主人公のお話だったのでイマイチだった。シリーズの短編以外では『僕は秋子に借りがある』がとても良かった。とにかく秋子が魅力的。お気に入りの名言もほとんどがこの短編から。『僕に似た人』は理解できなかったのでネットの力に頼った。なるほどね。わかるかよ。
森先生の作品に限らず、短編集は収録されている短編の三分の二ぐらいがつまらないイメージがあったのだけれど、本作は三分の二ぐらいが面白かった。前作『まどろみ消去』は「もう読み返さないと思う」みたいな感想を書いたような気がするけれど、本作はまたいつか読み返すと思う。つまりは前作より本作の方が面白かった。
そういえば、解説をあの『幽遊白書』や『ハンターハンター』で有名な冨樫先生が書いていたので驚いた。作家で一番好きなのは当然のことながら森先生だけれど、漫画家で一番好きなのは冨樫先生なので、冨樫先生が森先生のことを「好きな作家」と評していたのはなんだか嬉しかった。解説自体は特別に面白いわけではなかった。
お気に入りの名言
「私が死んだら、清文さんは、美帆さんと結婚されるおつもりなのでしょう?」#地球儀のスライス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年9月20日
何故、僕のストーリィだけが、完結しないのだろう。もちろん、死んだら完結するんだけれど、死んだら、僕自身には認知できない。自分のストーリィだけ、ラストを知ることができないなんて、なんて不合理なんだろう。#地球儀のスライス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年9月20日
魔法使いなんて本当は魔法使いなんだから、どんな姿にも化けることができるはずなので、魔法使いみたいな格好をしてるのは魔法使いとして絶対におかしいです。#地球儀のスライス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年9月21日
実に無駄である。けれど、「贅沢」という概念の具体的な内容とは、結局は「無駄」以外にないのである。#地球儀のスライス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年9月21日
バラサラという名の駅に到着するまでに、萌絵は犀川の躰に六回触れることができた。もう少し本気になって躰を支えていたら、二回だっただろう。#地球儀のスライス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年9月22日
ほら、腕なんかさ、関節が一つ多くて、三つ折りになるんじゃないかって疑ったぐらいだもんね。これ、冗談だよ。でも、長かったなあ……。#地球儀のスライス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年9月22日
「何の話?」再び宇宙的タイムラグを経て、僕は尋ねた。「秋子の話」彼女は即答し、遅れて微笑んだ。#地球儀のスライス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年9月23日
「誰、秋子って?」「知らない?」「知らない」「あのね……、私だよ」彼女は自分の鼻先に指を当てると、白い歯を見せて、ぷっと吹き出し、周りの連中が振り向くほど高い声で笑った。#地球儀のスライス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年9月23日
女の子と無意味な会話をするだけで一日の目的の大半が達成されたと勘違いできる、そんな特技を持った連中がいるんだ。しかも、それで人生の目的の大半を忘れられる特典付きの連中がいるはずだ。#地球儀のスライス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年9月23日
「別にいいよ」「こういうときって、見るものじゃない?」「こういうときって、どういうとき?」「秋子が兄貴の写真を見せるって言ったとき」「見てもいいよ」#地球儀のスライス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年9月23日
「本当に歩いてきたの?」「たまに走ったよ」秋子も笑いだす。#地球儀のスライス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年9月23日