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【ネタバレなし】森博嗣『朽ちる散る落ちる』読了【感想】

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あらすじ

地下密室と宇宙密室 驚天動地、森ミステリィ

土井超音波研究所の地下に隠された謎の施設。絶対に出入り不可能な地下密室で奇妙な状態の死体が発見された。一方、数学者・小田原の示唆により紅子は周防(すおう)教授に会う。彼は、地球に帰還した有人衛星の乗組員全員が殺されていたと語った。空前の地下密室と前代未聞の宇宙密室の秘密を暴くVシリーズ第9作。

出典元:http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000203858

 

感想

『六人の超音波科学者』の感想に「つまらなかった」というような感想を書いたような気がするけれど、あの作品は本作の序章であったと考えると納得できる。おかげで、本作はいきなり本題から入るような感じだったので、最初から面白かった。同じ場所で異なる事件が描かれていることに驚いた。おまけに短編集『地球儀のスライス』の中の一編『気さくなお人形、19歳』まで絡んでくるのだけからすごい。どこまで想定して書いているのか気になる。森先生のことだから全て想定して書いているのだろうけれど。

本作はとにかく人間関係が複雑で、頭がパンクしそうになった。けれど、そういう小難しさや、ややこしさを求めて森作品を読んでいるので、複雑であれば複雑であるほど、ややこしければややこしいほど、満足度が高くなる。どうせ一度で全てを理解することはできないしね。短編集の満足度がそこまで高くないのは、ややこしさに欠けるからかもしれない。お気に入りの一文は少なめだったし、地下のトリックもおまけ程度に感じたけれど、とても面白い作品だった。

紫子は相変わらずに寒いのだけれど、逆によくこんなキャラクターを作り出すことができるなと思う。紅子のような天才から紫子のようなお笑い担当まで、森先生の豊富すぎるボキャブラリには驚かされる。本作も紅子さんと祖父江さんに絡みが多いので、紅子さんが嫌な奴に見えた。やっぱり僕は祖父江さんと保呂草の2人が好き。最後に紅子さんが演技をするシーンがよかった。

 

お気に入りの一文