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あらすじ
閉ざされた研究所 発見される死体
土井超音波研究所、山中深くに位置し橋によってのみ外界と接する、隔絶された場所。所内で開かれたパーティに紅子と阿漕(あこぎ)荘の面々が出席中、死体が発見される。爆破予告を警察に送った何者かは橋を爆破、現場は完全な陸の孤島と化す。真相究明に乗り出す紅子の怜悧(れいり)な論理。美しいロジック溢れる推理長編。
感想
結論を先に書くと今まで読んできたVシリーズの中で1番つまらなかった。
犯人が容易に予想できてしまったのが、つまらないと感じた大きな要因のひとつ。これは僕の推理力が特別に優れているというわけではなく、読者のほとんどが気づいたのではないだろうか。森先生のことだから、わざとそういう構成にしたのかもしれないれど「犯人は誰なのだろう」というドキドキ感がないのはミステリとしては楽しみに欠ける。
犯行のトリックや、エレベータの壁の文字の謎については全くわからなかったけれど、種明かしを聞いても特別に面白いとは思わなかった。特にエレベータの謎については「科学者がそんな選び方をするか?」「そんな都合の良い人物がいるか?」と疑問ばかりが頭に残ってしまい、なんだか腑に落ちなかった。
それでも森先生特有のユーモアのあるオシャレな言い回しがあれば、それだけで一定以上の満足感を得ることができるのだけれど、本作は本当に森先生が書いたのかと疑ってしまうほどに、気に入る文章がなかった。
シリーズの前半では魅力的に感じた紅子さんのことが、最近はあまり魅力的に感じなくなってきたのも残念。おそらくは恋敵が、登場人物の中で読者が1番感情移入しやすい凡人の祖父江さんであるからだと思う。祖父江さんがもっと嫌な奴だったら紅子さんの意地悪も「かわいらしい」「人間らしい」と思えるのかもしれない。小鳥遊練無と香具山紫子の2人には最初から魅力を感じていなかったので、阿漕荘のメンバーで魅力を感じるのは保呂草だけになってしまった。
前作、前前作が面白かっただけに、このまま最後まで駆け抜けていくかと思っていたので残念だった。
お気に入りの名言
一度でも彼女の瞳を見つめれば、容易には視線を逸らすことができないだろう。高性能マグネットのような瞳だ。#六人の超音波科学者 #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年8月18日
振り返ると、後ろのソファに香具山紫子が一人で座っていた。脚を真っ直ぐに伸ばし、のけ反った姿勢で、背もたれに頭をのせ、天井を仰いで口を開けている。雨漏りの水滴を口で受け止めようとしているのではない。 #六人の超音波科学者 #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年8月22日
苺は大きくなるほど甘さが薄くなる、という法則を彼は体験的に学んでいたが、それでもついつい粒の大きいものを手に取ってしまう。習性は、理屈だけではなかなか変革できないものだ。 #六人の超音波科学者 #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年8月22日
「誰の死体?」「死体は誰のものでもないんだよ」#六人の超音波科学者 #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年8月22日
「どうも、ここを壊した理由が今一つわからないし、つまりは、この先に理由がある、としか思えませんから」#六人の超音波科学者 #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年8月24日