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あらすじ
犀川&萌絵も登場!
多面性が光る短編集西之園萌絵(にしのそのもえ)にとって、その夜は特別なものになるはずだった。けれどちょっとした心理の綾から、誘拐事件の謎解きをする展開となり……(「いつ入れ替わった?」)。上から読んでも下から読んでも同じ文章になる回文同好会のリリおばさんが、奇妙な殺人事件を解決(「ゲームの国」)など軽やかに飛翔する、短編7作を収録。
目次
トロイの木馬 Trojan Horse Program
赤いドレスのメアリィ Mary is Dressed in Red
不良探偵 Defective in Detective
話好きのタクシードライバ That's Enough Talking of Taxi Driver
ゲームの国(リリおばさんの事件簿1) The Country of Game
探偵の孤影 Sound of a Detective
いつ入れ替わった? An Exchange of Tears for Smiles
感想
過去3作ある短編集と比べると、本作が一番面白くなかった。「お気に入りの一文」も少なめ。
最初の『トロイの木馬』がとにかく退屈。専門用語だらけで理解できない上、おそらくは森先生の短編の中で一番長いので読むのが苦痛だった。『話好きのタクシードライバー』や『探偵の孤影』『ゲームの国』は単純に好みではなかった。やっぱり僕は森作品には天才と恋愛的な要素を求めているのだろうと再確認。基本的にはシリーズの短編でないと満足できない。
S&Mシリーズの短編『いつ入れ替わった?』だけはすこぶる面白かった。終盤の数ページ、特に最後の一行が印象的。冒頭で犀川先生が珍しく緊張していたのは、この数ページがあるからだったのかと思うと納得がいく。本作の大半を面白くないと思って読み進めてきたのに、読了直後は「この短編集を読んでよかった」と思った。それぐらいこの短編だけは読み応えがあった。「終わりよければ全て良し」とはこのことだろう。お話自体の構成が面白いのは勿論、単純なのにわからないトリックには驚かされたし、なにより萌絵ちゃんと犀川先生の関係に関する大きな出来事には驚かされた。本当にこれを短編で書いてよかったのかとさえ思ってしまう。S&Mシリーズファンは必読の1冊。
お気に入りの一文
「違うって。だからぁ、そのさ……、はっきり言うと、洋服の面積がちょっと足りないんじゃないかってことだよ。つまりその、君の表面積に対して」#虚空の逆マトリクス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年10月29日
これほどエラーの多いスクリプトはないのに、何故か止まらずに走り続ける、それが人間の仕様だ。#虚空の逆マトリクス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年10月22日
バーチャルの世界でも、結局、人は社会の中でしか生きられない。他人に囲まれて、他人と比較しないと、自分を見失ってしまうのだろう。#虚空の逆マトリクス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年10月29日
なにしろ、タクシーというものは、鉄道や郵便とは反対で、時間が多くかかるほど料金が高くなるという極めて不合理な料金システムを採用している。これと同じものは、病院や医者だけではないだろうか。#虚空の逆マトリクス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年10月23日
おそらく、廊下を掃除している老婆だろう。時間のあるときに、たまに俺のオフィスの床も綺麗にしてくれることがあった。どういうつもりかしらないが、そうやって神様のお目に止まろうという魂胆だろう。#虚空の逆マトリクス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年10月24日
「あまり、悪口を言いたかないがね」と前置きをして、女は思う存分に悪口をぶちまけた。#虚空の逆マトリクス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年10月24日
「言うと思った」「そう言うと思って言った」#虚空の逆マトリクス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年10月25日
西之園萌絵はステアリングを握っていた。背中から伝播する欲求不満のエンジン音が可哀想だ、と彼女は思う。できることならば、そっと撫でてあげたい。#虚空の逆マトリクス #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年10月25日