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森博嗣『虚空の逆マトリクス』読了【短編集】

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あらすじ

犀川&萌絵も登場!
多面性が光る短編集

西之園萌絵(にしのそのもえ)にとって、その夜は特別なものになるはずだった。けれどちょっとした心理の綾から、誘拐事件の謎解きをする展開となり……(「いつ入れ替わった?」)。上から読んでも下から読んでも同じ文章になる回文同好会のリリおばさんが、奇妙な殺人事件を解決(「ゲームの国」)など軽やかに飛翔する、短編7作を収録。

出典元:http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000204180

 

目次

トロイの木馬 Trojan Horse Program
赤いドレスのメアリィ Mary is Dressed in Red
不良探偵 Defective in Detective
話好きのタクシードライバ That's Enough Talking of Taxi Driver
ゲームの国(リリおばさんの事件簿1) The Country of Game
探偵の孤影 Sound of a Detective
いつ入れ替わった? An Exchange of Tears for Smiles

 

感想

過去3作ある短編集と比べると、本作が一番面白くなかった。「お気に入りの一文」も少なめ。

最初の『トロイの木馬』がとにかく退屈。専門用語だらけで理解できない上、おそらくは森先生の短編の中で一番長いので読むのが苦痛だった。『話好きのタクシードライバー』や『探偵の孤影』『ゲームの国』は単純に好みではなかった。やっぱり僕は森作品には天才と恋愛的な要素を求めているのだろうと再確認。基本的にはシリーズの短編でないと満足できない。

S&Mシリーズの短編『いつ入れ替わった?』だけはすこぶる面白かった。終盤の数ページ、特に最後の一行が印象的。冒頭で犀川先生が珍しく緊張していたのは、この数ページがあるからだったのかと思うと納得がいく。本作の大半を面白くないと思って読み進めてきたのに、読了直後は「この短編集を読んでよかった」と思った。それぐらいこの短編だけは読み応えがあった。「終わりよければ全て良し」とはこのことだろう。お話自体の構成が面白いのは勿論、単純なのにわからないトリックには驚かされたし、なにより萌絵ちゃんと犀川先生の関係に関する大きな出来事には驚かされた。本当にこれを短編で書いてよかったのかとさえ思ってしまう。S&Mシリーズファンは必読の1冊。

 

お気に入りの一文