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あらすじ
嵐の中、孤絶した館で超能力者が殺された。雷鳴、開かないドア、通じない電話、完全なる密室――
森に建つ洋館は“超能力者”神居静哉の別荘で《伽羅離館(がらりかん)》と呼ばれていた。この屋敷に探偵・赤柳初朗(あかやなぎはつろう)、山吹、加部谷ら7人が訪れる。突然轟く雷鳴、そして雨。豪華な晩餐のあと、密室で館の主が殺された。死ぬ直前に聴いていたラジオドラマは、「τ(タウ)になるまで待って」。大きな謎を孕む、人気Gシリーズ第3作。
感想
本作は今まで読んできた森作品の中でも群を抜いて、ずば抜けて、ダントツで、つまらなかった。短編集でつまらない作品はあったような気がするけれど、シリーズ作品でここまでつまらない作品は初めてだと思う。「超能力者の住む別荘」という特異なシチュエーションにしては、密室のトリックが地味だったし、犯人についても消化不良。推理シーンもあっさりしすぎていてイマイチ。にも関わらず、事件が起こるまでが長いというのだから、最初から最後まで退屈で仕方がなかった。3作品続けてそこまで面白いとは感じなかったので、正直にいうと次作の『εに誓って』もあまり読む気が起きない。このまま退屈なシリーズだったらどうしようと不安。
Gシリーズの感想に毎回書いているような気がするのだけれど、やはり登場人物が過去作に比べて魅力に欠ける。魅力に欠けるので、過去シリーズでは楽しめた事件が発生するまでの日常的なシーンなんかが退屈に感じてしまうのが、つまらないと感じる大きな要因であるように思う。天才同士の会話こそが森作品の醍醐味なのに、Gシリーズの天才ポジション海月くんは積極的に話をしないキャラなのが残念でしょうがない。頼むからもっと喋ってくれ。もういっそのことS&Mの二人が主人公になってくれたらいいのにとさえ思う。とはいえ、二人も大人になりすぎてS&Mシリーズの頃ほどの魅力はないのだけれど。
1作目は西之園萌絵の名前が出てきて驚いて、2作目では保呂草の名前が出てきて驚いて、本作では真賀田四季の名前が出てきて驚いた。壮大なシリーズになりそうな感じはプンプンしているのだけれど、今の所は軽く触れるだけなのでじれったい。前フリが長すぎる。早くしてくれないと離脱してしまいそう。次作『εに誓って』は、今度こそシリーズ全体を通したストーリーが進んでくれたらと思うのだけれど、期待しない方がいいのかもしれない。
お気に入りの一文
どうなるのだろう、という期待と不安はあまりなかった。きっと、どうにもならないのではないか、という予測の方が強い。#τになるまで待って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年12月27日
難問に立ち向かう男って仄かに良いな、と彼女は内心考えた。べつに男に限らないか、とも思い直す。#τになるまで待って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年12月28日
「それから、方角や、あるいは生まれ年などによる占いの類も、まったく意味がありません。そういったものは、もっと別の次元で生じている物理現象を、間違った角度から不充分に観察して生じた誤解です」#τになるまで待って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年12月30日
「これに似たことを国枝先生から言われたことがあるんだ。研究でね。つまり、自分が既に持っている常識が、新しい可能性を知らないうちに排除してしまうことがあるって」#τになるまで待って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年1月2日
まあまあの可笑しさだったが、笑うのが癪だったので、加部谷は我慢した。#τになるまで待って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年1月2日
「思考というのは、既に知っていることによって限定され、不自由になる」#τになるまで待って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年1月4日
西之園萌絵が、大きな瞳を横に向け、犀川を観察していた。その顔があまりにも幸せそうに見えたので、加部谷はたびたび盗み見ていた。#τになるまで待って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年1月4日
ジャーナリズムというのは、真実を伝えるものだ、とよく謳われているけれど、そう謳われていること自体が、真実を伝えることの難しさを示している証拠かもしれない。#τになるまで待って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年1月4日