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あらすじ
爆弾を仕掛けられたバスは死に向かって疾走する。
Gシリーズ、緊迫の第4作。山吹早月と加部谷恵美が乗り込んだ中部国際空港行きの高速バスが、ジャックされてしまった。犯人グループからは都市部とバスに爆弾をしかけたという声明が出される。乗客名簿にあった「ε(イプシロン)に誓って」という団体客名は、「φ(ファイ)は壊れたね」から続く事件と関係があるのか。西之園たちが見守る中、バスは疾走する。
感想
本作は今まで読んできたGシリーズの中で1番面白かった。前作の『τになるまで待って』は森作品の中で一番退屈だったので心配だったのだけれど、不要な心配だった。ようやくか、という気持ちもある。このままどんどんと面白くなってくれればいいのだけれど。
物語はバスの中という限られた空間の中で展開されるのだけれど、加部谷と山吹の会話が面白かったので飽きることはなかった。特に同人誌に関するくだりが好き。海月がいない方がしっかり会話が弾んで面白い。今後はもっとこの二人を中心に話が進んでくれたらなと思う。
新しい登場人物の独特の価値観も面白く「お気に入りの一文」もそれなりに多かった。頭の中に置き土産として残された真賀田四季のプログラムと犀川が会話するシーンも良かった。今後も定期的にあればいいのにな、と思う。
この展開ではトリックも何もないのではないか、と思いながら読み進めたのだけれど、思わぬ形で、しっかりとトリックが用意されており、思わぬ形であっただけにハラハラさせれた。「え?」で終わるラストも好き。とはいえ犯人との掛け合いのようなものがほとんどないのでミステリとしては少し物足りなかった。
冒頭にも書いた通り、シリーズの中では一番おもしろかったので、本作からどんどんと「シリーズで一番」を更新してくれたらな、と思う。
お気に入りの一文
それでも、二人の間には、人間が一人ゆったりと座れるくらいのスペースがあいていた。これが二人の関係を象徴する距離だといえる。#εに誓って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月4日
みんな死んじまえ。できることなら、そうしたいところだけれど、でも、それよりも、自分だけが消えてしまう方がずっと簡単だ。そう、それが一番綺麗だよね、と思う。#εに誓って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月4日
大人になれば、もう最後、どうにもならない。誰にもなれない、もう自分はこの肉体で決まり、この形からは抜け出せないのだ。#εに誓って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月4日
そうなんだ、大丈夫、大丈夫、願いは必ず叶う、と教えられて大きくなった。それがだんだん、嘘だとわかっただけのこと。そして、すっかり理解できた頃には、もう死んだも同然の大人が一人出来上がっている、というわけだ。#εに誓って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月4日
人は歳をとると、誰でも変化する。たいていは鈍感になり、無関心になり、投げやりになり、そして諦めやすくなる。結局は、残りの人生が短くなることを悲観しているせいだ。そんなところだろう。#εに誓って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月4日
家の彼の部屋にあるゴミ箱はとても綺麗だ。母親が毎日掃除をしてくれるからだ。そこにゴミを入れないようにしているのは、親孝行のつもりである。同様に、彼女の耳に、ゴミのような今の自分の現状を伝える言葉を入れることもない。#εに誓って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月4日
自分は、少なくとも自殺しようと考えたことがない。たぶんない。辛いことがなかったからだろうか。それとも、辛いと思わない、鈍感さのおかげだろうか。これは、幸せなことだろうか。たぶん、幸せだと思う。そうじゃないかな、と思う。#εに誓って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月6日
だけど、死のうと考えることは、きっと自由なのだ。それを考えられることは、人間の尊厳の一部。考えても良い。考えるべきなのだ。そして、考えても死なないことに、価値があるのではないか。結果として、死ななかったことに、価値があるのではないか。#εに誓って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月6日
涙が流れることは、とても気持ちが良かった。少しだけ、なにかが綺麗になるような気がするから。流される。小さな疑問、小さな欺瞞、小さな偽り、小さな誇り、いろいろなものが流されていく。それが清々しい。そんなふうに感じるのだった。#εに誓って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月6日
問題を先送りにすること、それが生きるということだ。とにかく、今は死ななかった、それだけのことだ。#εに誓って #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月6日