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あらすじ
プレゼンされた首吊り死体たちと不可解なメッセージ。
Gシリーズのターニングポイント。地上12メートルの松の枝に、首吊り死体がぶら下がっていた。そばには、「η(イータ)なのに夢のよう」と書かれた絵馬が。その後も特異な場所での首吊り自殺が相次ぐ。一方、西之園萌絵(にしのそのもえ)は、両親の命を奪った10年まえの飛行機事故の真相に近づく。これら一連の事件に、天才・真賀田四季(まがたしき)は、どう関わっているのか――?
感想
前作もまるでS&Mシリーズのようだったけれど、本作はより、その傾向が顕著。またしても登場のラヴちゃんに加えて金子まで。2人はどちらも、特に金子は好きなキャラクターなので再登場してくれて嬉しい。相変わらずに良いキャラ。改めて考えてみてもS&Mは他のシリーズに比べると魅力的なキャラクターが多かったなと思う。
今まではうざいだけだと思っていた加部谷なのだけれど、本作ではなぜだか可愛らしく感じる。お気に入りの一文も加部谷のセリフが多い。それでも、加部谷の的外れな推理を聞かせられるのには飽きてきた。本作ではGシリーズの3人はほとんど脇役。
前作の感想で、西之園の両親の事故については触れられないのか、みたいなことを書いたような気がするのだけれど、早速、本作でがっつりと触れられた。『すべてがFになる』で張った伏線の回収をここまで先延ばしにしていた森先生はすごいなと思う。普通の作家ならもっと早くこのネタについて書いていただろう。ようやく、ついに、物語が動き始めると考えていいのだろうか。もうあまり期待していない自分がいる。
美術鑑定人の椙田が魅力的なので、次作以降はもっと活躍してくれたら、もっと面白くなりそうなのだけれど、期待はできなそう。
お気に入りの一文
「私はねぇ、ありゃ自殺じゃないって踏んどるんだけど」「踏んどけば、勝手に」娘が顔をしかめる。#ηなのに夢のよう #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月10日
「実家から、うどんを大量に送ってきたから」玄関に入りながら、山吹が言った。膨らんだ手提げ袋を持っている。「それで、出汁も作ってきた。鍋あいてる?」「出張料理人ですか?ええ、鍋なら暇そうにしてますけど」#ηなのに夢のよう #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月10日
「ああ、なんとなく、わかってきたかも」彼女は、計算結果を書き込んでから呟く。「しかし、なんとなく、ではいけないのだ。うん、テストに出たら解けないかもだ」#ηなのに夢のよう #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月10日
「いや、相変わらず、全然料理していないね……」山吹が言う。「してますよ、ときどき……、まあ、主にトーストとかが多いですけど」#ηなのに夢のよう #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月10日
涙が頬を伝っていた。さっきは泣かなかった。自分のことでは泣かないのに、どうして友達のことで泣けるのだろう、と西之園は思う。プロテクトが弱いからだ、きっと。#ηなのに夢のよう #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月11日
実際に会うのは、一カ月半ぶりのことだった。そんなに久しぶりというわけでもないが、しかし、会いたいという欲求に比べれば、会える時間は、気が遠くなるほど少ない。彼に会える時間が、残りのすべての時間の目標になってしまっている。#ηなのに夢のよう #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月11日
一応鉄筋コンクリートだけれど、冬はとても寒い。一人だから寒いのかもしれないが。#ηなのに夢のよう #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月11日
四十代だろうか。老け込んではいない。勢いのある人生が表情にも、そしてその鋭い視線にも感じられた。男というのは、人生が隠せない生きものなのだな、と彼女は再認識した。おそらく、戦闘的能力を鼓舞する本能からだろう。#ηなのに夢のよう #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2020年4月11日