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森博嗣『レタス・フライ』読了【短編集】

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あらすじ

西之園萌絵は、叔母を連れて白刀島までやってきた。加部谷と、この島の出身者である山吹、海月と合流し、夕食の席で、島の診療所に女性の幽霊が出るという噂話を耳にする。(「刀之津診療所の怪」)。ほか「砂の街」、文庫版に初収録の「ライ麦畑で増幅して」など、煌めく魅力を湛えた、全10作の短編を収録。(講談社文庫)


どこからが夢?どこまでが現実?魔法のような手品のような短編集
多面体の輝きを放つ、森ミステリィの変幻

西之園萌絵は、叔母を連れて白刀島までやってきた。加部谷と、この島の出身者である山吹、海月と合流し、夕食の席で、島の診療所に女性の幽霊が出るという噂話を耳にする。(「刀之津診療所の怪」)。ほか「砂の街」、文庫版に初収録の「ライ麦畑で増幅して」など、煌めく魅力を湛えた、全10作の短編を収録。

出典元:http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000205020

 

目次

ラジオの似合う夜 A Radiogenic Night
檻とプリズム A Prism in the Cage
証明可能な煙突掃除人 Provable Chimney Sweeper
皇帝の夢 The Imperial Dream
私を失望させて Drive Me to Despair
麗しき黒髪に種を Seeds for Her Lovely Tresses
コシジ君のこと My Most Unforgettable Figure
砂の街 The Sandy Town
刀之津診療所の怪 Mysteries of Katanotsu Clinic
ライ麦畑で増幅して The Amplifier in the Rye

 

感想

シリーズと関係のある作品が3つに、無関係の作品は7つの計10作で構成された本作。いつも通り、シリーズとは無関係の短編は特別に面白いわけではなかったのだけれど、ショート・ショートといえるほど短かったおかげで、過去の短編集と比べると読みやすかった。『檻とプリズム』『証明可能な煙突掃除人』『皇帝の夢』『私を失望させて』『麗しき黒髪に種を』『コシジ君のこと』『砂の街』の7作品はもう2度と読まないと思うし、これから本作を読もうと思っている人は読まなくてもいいように思う。せっかくだから読むに越したことはないけれど。

とはいえ、シリーズと関係のありそうな作品も、そこまで面白いわけはなかったので残念だった。つまらくはなかったけれど。強いて言うのであればGシリーズの短編『刀之津診療所の怪』が一番面白かった。面白かったというよりは驚かされた。終盤の数ページ、特に最後の一行が印象的。ここまで短編集を全て読んできた人へのご褒美のような作品。『ラジオが似合う夜』と『ライ麦で増幅して』もシリーズ作品らしい雰囲気は味わうことができたという点ではよかったけれど、物語としてはほとんど進んでいないので、今までのシリーズ物の短編に比べると読む必要性が少なかったように思う。

つまらない短編が7作につまらくないはないけれど面白くもない短編が3作の計10作で構成された本作。今後、読み返すとしたら、つまらなくなかった3作品だけだろうなと思う。冒頭にも書いた通り、どうやら本作が森先生にとって最後の短編集らしい。森先生の短編を読むのもこれで最後かと思うと嬉しいような寂しいような微妙な感情。少しだけ前者の感情の方が強いかもしれない。

 

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