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あらすじ
もしもこれまでの人生、1冊の森博嗣も読んでいなかったら。――<西尾維新(解説より)>
その死体は、Yの字に吊られていた。背中に作りものの翼をつけて。部屋は密室状態。さらに死体発見の一部始終が、ビデオで録画されていた。タイトルは「Φ(ファイ)は壊れたね」。これは挑戦なのか?N大のスーパ大学院生、西之園萌絵が、山吹ら学生たちと、事件解明に挑む。Gシリーズ、待望の文庫版スタート!
感想
Vシリーズのキャラクターが個性派揃いだったからか、Gシリーズの新しいキャラクターはなんだか個性が薄いように思う。森作品とは切っても切れない天才キャラが海月ぐらいしか見当たらなかったのだけれど、その海月も口数が少ないせいで、他のシリーズの天才のような魅力はないし、おかげでお気に入りの一文も少なかった。海月に対する萌絵の反応が意味深だったように感じたのだけれど何かあるのだろうか。
当たり前のように萌絵が登場していることにも驚いた。なんとなく話す言葉が萌絵ではないような気がしたのだけれど、登場人物の紹介ではしっかりと「西之園萌絵」と記載されていたので、萌絵なのだろう。直前に読んだ『すべてがFになる』から本作までには何年も経っているので、萌絵の成長に僕がついていけていないからそう感じるのかもしれない。本文にも大人になったというようなやりとりがあったように思う。萌絵には右往左往する存在であってほしいという気持ちがどこかにあって、後輩を取りまとめるしっかりとした先輩というのは、なんだか似合わないなと思ってしまう。S&Mシリーズなどでは「萌絵は〜」と書かれていた文章が「西之園は〜」と書かれているのが気になるのだけれど、なにかの伏線だろうか。単純に視点の違いによるものなのかな。
新しい登場人物は萌絵のようなお金持ちでもない、保呂草のような特別な職業でもない、普通の学生ばかりなので、なんだか地味なシリーズという印象。とはいえ、だからこそ、Vシリーズよりも読みやすかった。面白いといえば面白いのだけれど、他のシリーズの方が今のところは好みであるように思う。Gシリーズは萌絵や犀川、今後出てくるであろうその他森作品の主要人物たちを第三者、それも一般人に近い視点から見るシリーズなのだろうか。続きに期待。
お気に入りの一文
代わり映えのしないいつもの格好だ。はっきりいってセンスの欠片もないが、わざとそういうファッションにチャレンジしているつもりかもしれないし、彼女が今よりも魅力的になることには抵抗があるから、もちろん指摘したことは一度もなかった。#Φは壊れたね #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年11月30日
彼が静寂を製造していることはまちがいない。彼一人のために部屋のあらゆるものが音を立てなくなったのだ、と加部谷には思えた。#Φは壊れたね #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年12月5日
そうまで言われると、なにか驚くべきアイデアを思いついてやりたくなる。彼女の中で意地の鉄塔が突貫工事でぐいぐいと立ち上がっていった。#Φは壊れたね #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年12月5日
海月は黙って視線を落とす。フォローなし。もう会話は終わりだ。おそらく、彼と会話を続けることは、世界ランキングのプロテニスプレィヤとラリィをするくらい難しいだろう。#Φは壊れたね #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年12月7日
「そんなことは言ってないよ。情報としては面白い。頭から嘘だと決めつけるほど、非現実的でもないし、妥当性も低くない。ただ、そう評価しただけ」#Φは壊れたね #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年12月8日