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あらすじ
死体に記された謎の文字「θ」が示すものは?
25歳の誕生日にマンションから転落死した男性の額には、θ(シータ)という文字が書かれていた。半月後、今度は手のひらに赤いθが書かれた女性の死体が。その後も、θがマーキングされた事件は続く。N大の旧友・反町愛から事件について聞き及んだ西之園萌絵は、山吹ら学生三人組、探偵・赤柳らと、推理を展開する!
感想
結論からいうと本作も特別に面白いわけではなかった。説明されると簡単なのだけれど、読んでいる時には気がつかない、絶妙なトリックには驚かされたし、張り巡らされた数々の伏線を回収しながら繰り広げられる海月の推理シーンは読み応えがあったのだけれど、なんだか物足りなかった。Gシリーズは森作品特有の理系っぽさと、恋愛的な要素が不足しているように感じる。
そしてやはり前作『φは壊れたね』と同様、地味だなという印象は変わらない。主要メンバーも地味だし、事件のシチュエーションも地味。もっとこう、航空機だとか豪華客船だとか捩れ屋敷とか出てこないもんかね、と思ってしまう。天才ポジションの海月もあまり魅力的に見えない。可愛げがないというか隙がないというか。今までの森作品の中では1番魅力がない天才かもしれない。今後に期待。
犀川と萌絵の関係性も目新しさがなく退屈だし、なんとなく蛇足であるように感じる。もう既に2人の良いところは今までのシリーズや短編で出し尽くしているような気がしないでもない。Gシリーズの2人は今のところは、そこまで魅力がないので、そう感じるだけという可能性もある。もう既にある程度、2人の関係には結論が出ているので、もどかしさがないのも退屈に感じる理由かもしれない。
そしてついに電話だけだけれど保呂草が登場。時系列的にかなり歳をとっているということでいいのだろうか。四季シリーズをS&MシリーズとVシリーズを繋ぐシリーズだとするのなら、Gシリーズはその2つ、もしくは四季シリーズを含めた3つのシリーズのその後を語るシリーズなのだろうか。タイトルから推測するに、シリーズで大きな1つの事件、もしくは1人の犯人を扱うのかな、と想像しながら読んでいるのだけれど、そうだとしても前振りが長いなと感じる。2作読んでも全貌が見えてこないので、モヤモヤする。Gシリーズとはどういったシリーズなのかだけでも早く知りたい。次作『τになるまで待って』は、もっとシリーズ全体を通したストーリーが進むことを期待している。そんなものがあるのであれば、だけれど。
そういえば、保呂草に電話を繋いでくれた女性は誰だったのだろう。もしかして僕の知っている人だろうか。まさかあの人ではないだろうし。いや、まさかね。
お気に入りの一文
かちんと頭の中で音がしたけれど、加部谷は笑顔を保持した。#Θは遊んでくれたよ #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年12月11日
彼は、西之園に頭を下げてから、部屋を出ていった。自分の方へは視線が向けられなかったことに、加部谷は僅かに落胆した。西之園萌絵が隣に座っていては、しかたがない。引力が大きすぎる。#Θは遊んでくれたよ #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年12月11日
「今の洞察は鋭いわ。そのとおりだと思った。こんな場所で無防備でいられるほど相手を信用できるとしたら、それは、よほど親しい関係ってことだし、そんな関係だとしたら、ちょっとした雰囲気で、相手がしようとしていることを察知できるでしょうね」#Θは遊んでくれたよ #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年12月12日
「つまり、宗教的ってことになるかな。宗教って、どうして人の命をあんなに軽く扱うのかって考えたことがあるけど」「それはそうでしょう。死の恐怖から人を救うために存在する仕組みなんだから、当然ながら、命の軽さを主張する論理になるんじゃない?」#Θは遊んでくれたよ #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年12月12日
光の当て方によっては、影はどちらにも現れ、形の歪み方も変わり、幾つもが同時に現れることさえある。そんなものなのだ。ただ、それがあった、存在していた、ということを仄めかしているにすぎない。人が事実と認識している概念は、その程度のものだ。#Θは遊んでくれたよ #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年12月13日
忘れてしまったことだけは、認識できる。まったく、都合の良い仕組みだな、人間というものは、と彼女は微笑むことができるようになった。#Θは遊んでくれたよ #森博嗣
— ジェニック (@jenik29) 2019年12月13日