筆者が一番好きな作家は森博嗣先生です。
森先生の作品はミステリ作品として面白いというのは勿論、登場する数々のキャラクターが魅力的なのが特徴です。中でもいわゆる天才キャラを書かせたら森先生の右に出る者はいないでしょう。天才を生み出すことができるのは天才だけなのです。この天才キャラ達を中心とした知的でセンスのある会話や文章こそが森作品の醍醐味であるといえます。
そんな森作品には、心に残る名言が幾つも存在しています。天才は良いことを言うのです。そこで、森先生の小説の中から個人的に好きな名言、というよりはお気に入りの一文を下記にまとめてみました。全てのシリーズを対象とすると膨大な数になってしまう為、今回は四季シリーズ中から選んでおります。
1作品から3つ程度選んでおりますが、それぞれの作品のリンク先には筆者の好きな文章を「お気に入りの一文」としていくつも載せてありますので、気になった方はそちらも合わせてチェックして頂ければと思います。
四季 春
どんな童話でも、良い人間は皆、形も良い。醜いものが愛される物語もあるけれど、最後には、美しい姿に変わってハッピィエンドになる。そうならなければ、幸せは訪れないかのように。
貴方にとって価値がなくても、私には価値があるの。ですから、私に黙って消えてしまわないで」
「彼女の不安定さは、過大な自己評価に起因しているの。けれど、自分を正しく評価したときには、今よりも状況は酷くなるでしょう」
四季 夏
天才的ではない。ただの天才でもない。真の天才だ。それがどんなものか、ようやく彼も理解しつつある。否、理解などできないことが判明した、といった方が近いだろう。
顔の特徴というのは、つまり、通常は目立つ欠陥に依存している、といえるだろう。欠陥のないものには特徴がないという理屈である。
その理屈は間違っている、と四季は思ったが、そう思い込んでいる人間に説得しても効果は少ないだろう。
四季 秋
「なんか、怒っているみたいだけれど」彼は言った。無言で小さく頷いてみせる。それが可能なのは、怒っていない証拠だが。
今の自分はとても落ち着いている、と感じることができた。もしかして、これが大人になったということだろうか。単に、歳をとって鈍感になっただけかもしれないけれど……。
「力のあるものに憧れる、という心理には、その力への恐れが存在しますからね。神を愛する者は、神を恐れる者でした。人は、パワーを恐れ、それが自分の方へ向けられないように、そのパワーの下へ集まるのです」
「人は、自分が許せないときに、悲しくて泣く、そして、自分が許せたときに、嬉しくて泣くの」
四季 冬
「いや、そんなことはどうだって良い。墓になど入りたくもない。屍はどこかの道端にでも捨ててもらってかまわない。だいたい、生まれたとき、人は皆、捨てられたようなものだ。天から落ちてきたんだからね」
いかがだったでしょうか。
まとめてみると、改めて森先生の凄さを実感しました。
こんなにもコンスタントに名言と呼べるような文章を生み出すことができる小説家はなかなかいないのではないでしょうか。
他のシリーズについても近い内にまとめていこうと思っています。